山田温泉「緑霞山宿・藤井荘」と「旬菜花篭盛り」

信州高山温泉郷・山田温泉「緑霞山宿　藤井荘」は深山幽谷の宿ではあるが、信州の名旅館として名を馳せるため息の出る宿である。
（TOPの画像は身体がすっと軽くなる名湯「五万石風呂」／撮影・吉田良正）

ロビー左手の長いカウンターに通されると、眼前に迫る松川渓谷を挟んだ山の存在に圧倒され、木々を眺めながらいただく抹茶の一服に思わずため息をついてしまうのだ。
窓は電動で全開にできる設計で、目の前に広がる景観は春夏秋冬、どんな季節であっても感動の嵐を呼ぶこの宿の名物である。

内湯と露天風呂の間のガラス窓が総て戸袋に収納される設計の「五万石風呂」。その開放感もハンパではない。

源泉は、「元湯」と「わなば」との混合泉で、源泉温度は66.5度と高いので、加水して温度を下げ、循環ろ過とかけ流しを併用。
そのうえ、毎日湯を払って清掃するので、新鮮で清潔なのだ。

泉質は含硫黄-ナトリウム・カルシウム-塩化物泉で、代表する適応症は動脈硬化症・高血圧症・慢性皮膚病・切り傷など。
昔からリウマチ、運動機能障害、婦人病、痔症などに良く効くと伝えられている名湯である。

食へのこだわりでも名高い「藤井荘」の名物には、オイルフォンデュの「ぽんぽん鍋」や「源泉蒸し料理」があるが、朝食で提供される彩り豊かな「旬菜花篭盛り」は白眉だ。
今の季節なら、コゴミとタラの芽の和え物、花豆、インゲンの胡麻和え、小松菜のシラス和え、ワラビの巻き寿司、醤油豆と長芋、ノビルと豚肉の味噌炒め、切干大根煮と、カラダに優しく、これまた、ため息の出る素晴しさである。

↑心も身体も癒してくれる朝食「旬菜花篭盛り」

緑霞山宿・藤井荘（山田温泉）DATA

■『夕刊フジ』に好評連載の板倉あつし取材の「菜湯紀」を再編集したものです。